このページの目的
何を計算したのかを説明しない統計計算ツールは、得ていない信頼を求めていることになります。このページでは、本サイトで使用しているすべてのアルゴリズムと、その精度、そして適さない場合を挙げます。結果を左右する選択——Student法かWelch法か、カイ二乗検定に補正を加えるかどうか——については、その選択と帰結を埋もれさせずに明示します。
数値計算の方法
| 対象 | 方法 | 精度 |
|---|---|---|
| 正規分布の累積分布関数 Φ(z) | 誤差関数に対する Abramowitz & Stegun 7.1.26 の有理近似 | 絶対誤差 約1.5 × 10⁻⁷ |
| 正規分布の累積分布関数の逆関数 | Acklam のアルゴリズム | 相対誤差 約1.15 × 10⁻⁹ |
| t分布・F分布 | 正則化不完全ベータ関数 | 相対許容誤差 10⁻¹⁴ |
| カイ二乗分布 | 正則化された下側不完全ガンマ関数 | 相対許容誤差 10⁻¹⁴ |
| ln Γ(x) | Lanczos 近似 | 相対誤差 約10⁻¹⁵ |
不完全ベータ関数と不完全ガンマ関数は、引数の大きさに応じて級数展開または連分数展開を使い分けます。これは Numerical Recipes の標準的な扱いに従ったもので、反復回数の上限は500回です。表示はすべて小数点以下2桁(p値は3桁)で、これは上記いずれの方法の誤差よりも十分に粗いため、本サイトが表示する値において近似が制約になることはありません。
結果を左右する選択
2標本t検定:Welch法ではなくStudent法
2標本の検定は母分散が等しいと仮定し、分散をプールします。現在の方法論では、既定としてWelch法を推奨するのが一般的です。分散が等しい場合でも検出力の低下はごくわずかで、等しくない場合には格段に信頼できるためです。各群の標準偏差がおよそ2倍以上異なる場合、または分散も標本数も等しくない場合、ここで得られるp値は誤りとなります。しかも楽観的な方向に誤ることがあります。
2×2のカイ二乗検定:連続性補正なし
補正を加えていないPearsonの統計量を表示しています。期待度数が概ね5を下回る場合、この方法は非保守的——有意になりやすすぎる——であり、Fisherの正確確率検定が適切な代替手段です。
検定力分析:正規近似
標本サイズと検定力は、非心t分布・非心F分布による厳密計算ではなく、Cohen (1988) の正規近似法を用いています。G*Power と比較すると、通常は各群あたり1〜2名の差が生じ、その差は標本数が小さく検定力が低いときに最も大きくなります。必ず切り上げてください。また助成金申請、倫理審査、事前登録に数値を提出する前には、専用ソフトウェアで確認してください。
効果量の換算:群の標本数が等しいことを仮定
d と r の換算には r = d / √(d² + 4) を用いています。定数の4は a = (n₁ + n₂)² / (n₁ n₂) にあたり、これが4になるのは両群の標本数が等しい場合だけです。標本数の偏りが大きい設計では、実際の標本数から a を計算してください。
四分位数:線形補間
四分位数は線形補間法で算出しており、R の type 7 および Excel の QUARTILE.INC と一致します。他のソフトウェアは異なる定義を用いることがあるため、小標本では四分位数とIQRの値がわずかに異なる場合があります。
ヒストグラムの階級:スタージェスの公式
階級数は ⌈log₂(n) + 1⌉ です。標本数が大きい場合(概ね200超)や分布が歪んでいる場合には階級数が不足します。そうしたデータには Freedman–Diaconis の公式が一般に適しています。
箱ひげ図の外れ値:Tukey の 1.5 × IQR
近い側の四分位数から 1.5 × IQR を超えて離れた点を外れ値として示します。真に正規なデータでも約0.7%の点が偶然に該当するため、印が付いたことは調査のきっかけであって、誤りの証拠ではありません。
進学の参考データ
進学関連のページには3種類の情報が混在しており、その確からしさは同等ではありません。
- 公表されている換算規則——JUPASの点数体系、偏差値の計算式、修能の標準点数の計算式、五標のパーセンタイル定義。これらは確定した公開情報であり、そのまま再現しています。
- 検証済みの学科別数値——各大学が公表している文書から直接採録した少数の具体的な合格統計で、行ごとに出典リンクを付けています。出典が食い違った項目は、調整せずに削除しました。
- 合格ライン帯——公開情報をもとに整理したおおよその範囲です。これらは公式のものではなく、年ごとに変動します。表示するすべてのページでその旨を明記しています。
参考データには、最終検証日と再確認すべき間隔を記録した鮮度マーカーを埋め込んでいます。四半期ごとの自動処理が見直し期限を過ぎた項目を洗い出すため、古い数値が気づかれないまま残ることはありません。
意図的に設けていない機能
- 高考の換算ツールはありません。省ごとに問題、満点、合格ラインが異なるため、省をまたぐ換算に妥当なものは存在しません。高考のページでは代わりに大学の階層制度を説明し、各省の成績照会先へのリンクを掲載しています。
- ノンパラメトリック検定はありません。Mann–Whitney検定、Wilcoxonの符号順位検定、Kruskal–Wallis検定は実装していません。検定ウィザードは、それらが必要な場合に名称を示し、他の手段を案内します。
- 分散分析後の多重比較はありません。分散分析が有意であることは、いずれかの群の組み合わせに差があることを示すだけで、どの組み合わせかは示しません。TukeyのHSDなどは提供していません。
- 効果量の信頼区間はありません。点推定のみです。
誤りのご指摘
本サイトの数式、数値、出典に誤りがある場合は、お問い合わせページからご報告ください。計算そのものの誤りは緊急案件として扱い、参考データの誤りは修正のうえ検証日を更新します。
主要参考文献
- Abramowitz, M. & Stegun, I. A. (1964). Handbook of Mathematical Functions. National Bureau of Standards.
- Acklam, P. J. (2003). An algorithm for computing the inverse normal cumulative distribution function.
- Press, W. H., Teukolsky, S. A., Vetterling, W. T. & Flannery, B. P. (2007). Numerical Recipes (3rd ed.). Cambridge University Press.
- Cohen, J. (1988). Statistical Power Analysis for the Behavioral Sciences (2nd ed.). Lawrence Erlbaum.
- Tukey, J. W. (1977). Exploratory Data Analysis. Addison-Wesley.
- Delacre, M., Lakens, D. & Leys, C. (2017). Why psychologists should by default use Welch's t-test. International Review of Social Psychology, 30(1), 92–101.
- Hyndman, R. J. & Fan, Y. (1996). Sample quantiles in statistical packages. The American Statistician, 50(4), 361–365.